KIWI LIFE of MOANA

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ニュージーランドの大手スーパーマーケットが始めたASDや精神障害など含め色んな人が利用しやすいクワイエットアワーとは

2019年10月23日ニュージーランドの大手スーパーマーケット「カウントダウン(Countdown)」がクワイエットアワーを開始した。

 

そこから思うあれこれ。

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クワイエットアワーとは

カウントダウンが始めたこのイベントは、1週間に一度 毎週水曜日の14:30-15:30に行われる。

 

イベントと言ってみたが、そこには派手な装飾や音楽はなく名前の通りクワイエットな時間。

 

照明を減らし、店内放送もオフ。

 

スタッフが店内で商品を補充することやカートの回収も最小限に減らし、その他 入り口やレジから出る音もボリュームが下げられる。

 

普段のスーパーマーケットを知っていれば、それは薄暗く人気も少なく奇妙に感じるほど違う雰囲気だ。

 

どうしてそんな取り組みをやるのだろう。

 

 

自閉症や感覚過敏の人にだけいい時間?

カウントダウンのサイトを見ると “low-sensory”という言葉があった。

 

「刺激の少ない」ということ。

 

私たちはそれぞれが異なる感覚を持っている。

 

今の世界に不自由なく暮らしている人が大半だから今の世界があるのだろうが、その「世の中の普通」が苦痛と感じる人も多くいるのだ。

 

その代表としてよくあげられるのがASD(自閉症スペクトラム障害)かもしれない。

 

視覚や聴覚に入る情報が多すぎてうまく処理できなくて苦痛を感じる人がいる。

 

赤ちゃんの鳴き声や子どもの感高い声が苦手な人も多い。

 

またはASDではなくとも、精神的に辛い状態で人の多い場所に行きにくいという人もいる。

 

落ち着いた、静かで少し照明の落とされた空間での買い物だと負担が少ないと思う人は結構多いのではないだろうか。

 

店員が通路で作業をしていないという事は、車椅子利用者にとっても大きいメリットだろう。

 

ニュージーランド人の感覚はどうかわからないが、日本では車椅子利用者は周りに気を使う場面が多いからだ。

 

 

試験期間中にたまたまその時間に出くわして利用したことがある。

 

私はASDや精神障害そのほか特になんの診断も受けていない。

 

しかし、利用しての感想は「快適」だった。

 

時間帯もあるのだろうが、利用客は少なく少し薄暗い(と言っても十分明るい。普段のスーパーが明るすぎるのだ)

 

そんな環境でいつもよりのんびりショッピングを楽しむ事ができた。

 

カウントダウンのホームページによると

“We want our supermarkets to be welcoming and inclusive for all New Zealanders and their families. We know grocery shopping can be an anxiety-inducing experience for some customers and we wanted to help with that. By making a few small changes and creating a Quiet Hour, we hope we can make a big difference.”
 

私たちカウントダウンは全てのニュージーランド国民を歓迎します。一部のお客様にとって買い物は不安を覚えるものであり、クワイエットアワーによってその不安を軽減したいと思います。

少しの変化でクワイエットアワーを設ける事により、大きな変化を生み出せると思っています。

 

大手のスーパーマーケットがあらゆるお客さんのニーズに合わせようとしている事がよくわかる。

 

また、

“The lovely thing about Quiet Hour is that we have had very positive feedback from so many customers. Our older customers seem to really enjoy Quiet Hours too, as well as many other Kiwis  who actually just find shopping a bit stressful and can now visit at a more peaceful time,”

 

クワイエットアワーについて、多くのお客様からとても肯定的なフィードバックをいただいております。高齢者のお客様もこの時間を楽しまれ、他のお客様もショッピングは少しストレスの感じるものだと気づき、そして今はこの落ち着いた時間に買い物をすることができます。

と述べている。

 

実際に私が体感した通り、多くの人が刺激の少ない環境で落ち着いて買い物を楽しめているのだ。

 

そして利用時間中に見かけた光景で印象的だったのが、大きな声で電話通話をしていたお客さんに対してきちんと店員が電話を終えるように促していたこと。

 

ただなんとなく上からの命令でやっているのではなく、店員一丸となってクワイエットアワーを作り上げようとしているのかなと感じる場面だった。

 

 

仕掛け人はスーパーじゃない?

この取り組み、もちろん主体はカウントダウンなのだが、カウントダウンにアドバイスし、一緒に作り上げたのがAutism New Zealand

 

もうこれを見た時 私は感動した。

 

日本語に訳すと「ニュージーランド自閉症協会」みたいなものだろうか。

 

自閉症のニュージーランド全国組織。

 

日本の感覚では障害者団体はどうしても弱者なイメージが強い。

 

そんな障害者団体が、全国に180店舗を構える大手のスーパーマーケットとタッグを組み、こんな素敵な変化を生み出しているのか、と思うとワクワクした。

 

 

大手だからこその意味

ニュージーランドは何かを変える時、少しずつ徐々に周りの様子を見て反対意見をなんとか避けながら、、、というよりも大きいものがドッと動き出す印象が強い。

 

最近でいうと、クライストチャーチの銃乱射事件の後すぐに国の法律で銃の規制がすぐにかかった。

 

法律で環境保護の為に翌年にプラスチックの買い物袋を完全廃止にすると決まったあと、施行前にも関わらずカウントダウンを含む大手のスーパーがこぞってプラスティックの買い物袋を廃止(有料化)、エコバッグの推奨を率先して行った。

 

 

多くの人が利用する大手の企業や国が動くとそれに応じて国民は動かざるを得なくなる。

 

そしてその変化が習慣化されれば人の意識と行動は自然と変わって行くのだ。

 

 

今回のこの件も試験期間はあったにせよ、大手が動いた。

 

 

Autism New Zealand によるとニュージーランドには約8万人の自閉症スペクトラムの人たちがいるという。

 

ニュージーランド国民約480万人の60分の1に過ぎない人口だ。

 

身近にASDの人がいない人もいるかもしれない。

 

そんな少数派の声はなかなか大勢に届きにくいが、大手が動くと多くの人に伝わる機会が増える。

 

そしてクワイエットアワーについては一般利用者は“感覚過敏の人たちの為らしいけれども利用してみると自分たちにとっても快適だ” “こういうことがしんどいと感じる人がいるのか”と身をもって知る事ができる。

 

知ってもらう事、体感してもらう事それを一気に多くの人に提供できるのが大手の強みだ。

 

カウントダウンで始まったこのクワイエットアワーが他にも広がるのも時間の問題ではないかと個人的には感じている。

 

 

まとめ

・ニュージーランドの大手スーパーマーケットが始めたクワイエットアワー

 

・買い物に精神的な負担や不安を感じる人にとって心地よい時間づくりを目指す

 

・しかしそれは障害等を抱えた人だけに心地よいものでなく、一般客の中にもその時間を楽しむ人が増えそうなもの

 

・企画の仕掛け人はAutism New Zealand

 

・大手が動くとそれまでの常識が変わりやすい

 

 

今後のこの活動の進展に注目したい。

 

 

 参考記事

Countdown’s low-sensory Quiet Hour to be offered nationwide