KIWI LIFE of MOANA

世界の果てニュージーランドからKIWIとの国際恋愛や日常生活、それからニュージーの福祉/教育を発信!ワーホリ・ギリホリの人を応援したい情報ブログ。

ニュージーランドのロックダウンからみえる特別支援学校の重要性とオンライン授業の限界

f:id:moanakiwilife:20200424083546j:image

ニュージーランドの特別支援学校を含む学校がコロナの影響によって休校になってから4週間が経ちました。

 

現在ニュージーランドの特別支援学校でティーチャーエイドという補助教員のポジションで働いています。普段は学校に通ってくる障害を持つ子どもたちを一緒に過ごし教育のサポートや身辺面のサポートをしています。

 

ですので学校が休校になっている今、私の仕事としてはやる事がない状態です。

 

学校がどういう対応を保護者や子どもたちにしているのかあまり見えない立ち位置にいるのですが、このロックダウンで特別支援教育や障害者サービスについて思う事をまとめて行きます。

 

 

ニュージーランドの状況≪概要≫

ニュージーランド(以下NZ)でのコロナの感染拡大予防措置により、3/24から学校の休校が始まり、特別支援学校も全て門を閉めている状態です。

 

3/26から始まった警戒レベルが一番高いロックダウンは当初4週間と言われており、4/22にはレベル4は終了する予定でした。

 

実際のところ、新規感染者数は劇的に減っていて収束に向かっているように見えますが4/20の首相会見ではNZ政府の判断は慎重で、ロックダウンを5日間延長し4/27までとすること、4/28からの2週間はレベル3を維持する事の意向が発表されました。

 

そこからどういう業種がレベル3で営業を開始できるのか、学校はどうするのかの議論が行われている状況、学校再開についてはまだ明確な指示は政府から出ていない状況です。

来週からどうなるのか

レベル3に引き下げられる4/28から学校再開という声もあがる中、NZで最も大きいクラスターが起こったのが学校であることから学校再開に懸念を示す声も多く上がっています。

 

特別支援学校についてもニュースで時たま取り上げられていますが、「レベル3になってもすぐには再開しない」と言われていますし、勤務している学校からもすぐには開けないというお知らせが届いています。

 

レベル3に引き下げられ、どれくらいの大人たちが外での勤務を再開させるのかそしてそれによってウィルスの拡大が再度あるのかどうかによって学校のオープンもきまるのではないかと個人的には思っています。

 

子どもたちは感染しても重篤化しにくいなどと言われていますが、特別支援学校に在籍している子どもたちの中には基礎疾患があったり、医療的なケアを必要とする子など体が弱い子も多い事もあり、再開には相当慎重になっているのではないかと思います。

 

特別支援のオンライン授業への移行の限界

ある程度年齢が高く、ソーシャルディスタンスを引き続き守れる子どもたちから学校を再開させる話も出ていますが、政府は「自宅で勉強ができる環境があるのであれば自宅待機を推奨」しています。

 

私の知り合いでも普通学校の先生をやっている人がいてオンラインでの授業を展開されています。問題なくパソコンの前に座り、説明を聞き、課題に取り組める子どもたちに対してでもどのように集中して授業を受けてもらえるか、という事に悩まれているようです。

 

では特別支援学校はどうしているのか。

 

基本的には保護者の協力に頼るしかない、ように思えます。

 

休校が始まる以前から、私の学校ではSeesawというアプリを使って学校での様子を保護者とやり取りしていました。

 

連絡帳代わりのように、子どもたちの活動の写真やビデオを撮り先生がコメントと一緒に投稿するとクラス単位や個人など限定された保護者が見られるというアプリです。

 

元々そういうオンライン上でやり取りがあったので、休校期間中もそのSeesawを使っているようです。

 

しかしそれは普通学校で行われるような、直接子どもたちと先生を繋ぎ先生が子どもたちに画面越しに働きかけるものではなく、先生が自宅でできそうな支援やアクティビティのアイデアを保護者に共有するというものでした。

 

自らデバイスを準備し、その前で課題に1人で取り組むという事が難しいからです。

 

つまり保護者の次第で自宅教育に相当な差が生まれてしまうということかな、と思います。

 

しかし教育面だけでなく、生活面でのサポートを常時必要とする子どもたちが自宅に24時間いるという事は家族に相当な負担と犠牲を生むことに繋がりかねないんです。

 

家で面倒を見ているだけでも大変なのに、その上学校から与えられた課題に取り組むことはそう簡単な事ではありません。

 

学校再開が必要!ウイルス拡大の危険とのジレンマ

以上のように、「幼児を含む低学年の子どもたち」と「障害を抱える子どもたち」への家庭教育が保護者負担が一番大きいはずなのに現状では低学年や特別支援学校の再開が一番遠いところにあります。

 

また学び方としても、低年齢の子どもや障害のある子は人との直接的な関わりの中で学ぶ事が多かったり、さらに障害があるために直接介助を必要とするのでそういう子どもたちの為に学校再開はあらゆる面で重要にも関わらず、濃厚接触は避けられないのできっと特別支援学校は他の普通学校よりも遅い再開になるのではないかと思いながら学校の決定を待っています。

 

 直接的な関わりが必要な子どもたち程、感染のリスクが高い、、、ジレンマです。

 

日頃の仕事内容で見ても感染リスクはとっても高いんですよね。

・食事介助:唾液に触れること

・オムツ交換:身体介助で体同士の密着がある

・清潔保持が難しい:体の硬直等によりくしゃみをするときでも口を押さえられなかったり、清潔を保持するという概念の理解の問題

 

ちょっと考えただけで、そりゃいろんな菌をもらわない方が難しいし、移さないことも難しいと思います。

 

でも全部彼らをサポートする上で誰かがやらなきゃならない事なんですよね、、、

 

まさに日々濃厚接触です。

 

私の思い

この休校措置からロックダウン期間を含めてのこの4週間、私は自分が持っていた常識とNZ政府の対応にものすごくギャップを感じていました。

 

休校措置で完全に学校は閉まりました。

 

日本でも学校が休校になりましたよね、そして次に何が起こったか、福祉施設へのしわ寄せです。放課後等デイサービスがサービス時間の延長をするなどして障害児の受け入れをしました。

 

「休校してる意味ない」「でもサービスがなくなることのリスクもわかる」そんな思いで日本のニュースやツイッターをみていました。

 

先にもお話した通り、障害のある子をずっと家で家族だけでケアすることの大変さが容易に想像できたからです。

 

そこには感染以外のリスクもたくさんあって、保護者のストレスによる家庭内暴力のリスク、子ども本人が状況を理解できないところから来る不穏な状態で粗暴が増えるリスクなど、家庭崩壊が一番大きいのではないかと思っています。

 

環境がある程度整っている家庭だったり、障害の程度によっては自宅にいることが容易な子もたくさんいるので、問題が少ない家庭ももちろんあるでしょう。なので誰でもかれでも受け入れるのは違うのでは?と感じますが、セーフティネットとしての役割は維持し続けるものだと思っていたのです。

 

それは子どもたちの為だけではなく、一緒に住む家族の生活も含めた支援として。

 

それでもNZは一貫してクローズ。私は長期で学校が休みになる夏休みなどに子どもを日中預かって活動するホリデープログラムというところにも在籍しているので、そこが家族のサポートの為に開所するのではないか、と出勤要請がくることを覚悟していました。

 

しかしそれはなかったのです。NZのウィルス封じ込めの徹底さに驚くと同時に、障害者支援はエッセンシャルではないのか、、、?もう少し緩和措置があってもいいのではないかという疑問はありました。子どもたち大丈夫かな、、、保護者も大丈夫なのかなと。実際は私が知らないだけで開いている門があるのかもしれませんが。

 

こういう仕事を選んでいるので感染リスクが高いことは重々承知しているつもりですし、要請があれば働かなければならない事も覚悟しています。ティーチャーエイドという末端職員のポジションでその心構えが必要なのかはわかりませんが、誰かの生活を支える仕事はやっぱりそう簡単なものではないと思うのです。

 

このコロナの一見でオンライン授業が普及し、これからますます各地で広がるでしょう。こんな緊急時にでも子どもたちの教育の機会を提供しつづけるべくオンラインに素早く移行し対応しているNZの教育界の順応力はとても素晴らしいと思うのです。しかしその反面オンライン授業が向かない子どもたちも一定数はいる事にも焦点をあて、教育がさらに多様化されるといいなぁと思っています。

 

今は多様性の国ニュージーランドがまたさらなる多様化を進め、強くなっていくのを間近で見ている気分です。